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IFA業界事情

米国投信ビジネス2000兆円の深層

(第3回)
得意分野、営業スタイル、経歴…… 
「個性」で選ばれる営業担当者

画像:沼田 優子 氏
明治大学 国際日本学部
特任准教授
沼田 優子 氏

東京大学経済学部卒業後、野村総合研究所入社。NRIアメリカ、野村資本市場研究所にて、日米の金融機関経営、資本市場動向等の研究業務に従事。野村證券を経て、2012年より現職。

前回は個性豊かな営業担当者と証券会社の相性を取り上げたが、今回は営業担当者と顧客との相性について考えてみたい。

米国の個人投資家は、従来から証券会社のブランド以上に営業担当者との相性を考慮して取引先を決めると言われている。こうして選んだ営業担当者との付き合いは長期にわたることが多く、営業担当者が他社に移れば、顧客もともに証券会社を変えることが多い。そのため、営業担当者も自分の個性を対外的にアピールする必要がある。

ここで言う個性にはもちろん、営業担当者の気質等も含まれる。しかし顧客が注目するのは、何と言っても「どのような顧客層に対するどのようなサービスを得意としているか」ということに他ならない。

多くの個人投資家が注目する「営業担当者ランキング」

個人投資家が営業担当者の情報を収集する有力な手段の1つとして、雑誌等の営業担当者ランキングがある。営業収入や預り資産、営業の質、コンプライアンス歴等を評価軸に営業担当者がランク付けされ、上位入賞者のインタビュー記事等も掲載される。もともとは外務員専門誌が得意とする特集であったが、最近ではフォーブスやファイナンシャル・タイムズ等の一般向けメディアでも見掛けるようになった。一例として図表1に掲載したのがバロンズ誌のランキングの一部だ。

全米ランキングの上位3位は昨年に引き続き、大手証券モルガン・スタンレーの超富裕層部隊が占めた。特にトップの2人は同じシリコンバレーの支店で営業活動を行っているが、それぞれ個性の際立つ営業スタイルを取っていることは非常に興味深い。

例えばトップのチェース氏は、ストック・オプション等の株式報酬サービスを得意とすることから、対象顧客は企業からその経営幹部、従業員と幅広い。預り資産は216億ドルと極めて大きく、30人の営業担当者と50人のサポート・スタッフで対応している。

これに対し、第2位のヴァン氏は企業創業者(顧客比67%)を主要顧客とするが、プライベート・エクイティ業関係者も23%を占める。預り資産では1000万~1億ドルの顧客が57%で、100万ドル未満の個人投資家には対応していないとバロンズ誌は報じている。顧客の多くは経営者で、他者への権限委譲に慣れているため、ヴァン氏はCIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)のような立ち位置を心掛けるという。

一方で、独立系営業担当者トップのマルーク氏もカンザスという地域に根ざした営業を展開している。もともとは相続専門の弁護士として、11の証券会社の営業担当者を支援する立場にあった。しかし証券営業担当者は通常、税引き前の投資リターンの最大化は目指しても税引き後のリターンまでは目配りしにくいことに気づき、自社の前身となる小規模なファイナンシャル・プランニング会社を買収してこれを発展させた変わり種である。当然、個人の金融ニーズに対して、投資に限らず包括的に対応できる点が強みとなっている。言うまでもなく、このような発展形態を辿れる点が、独立系営業担当者の醍醐味であると言えよう。

彼の典型的な顧客の預り資産は150万ドルと、カンザスの「隣の億万長者」をターゲットとする。しかし顧客数は約8000人で、預り資産合計額は152億ドルと前述の全米トップと比べても見劣りはしない。

図表1

自らの「個性」を把握することで効果的な営業戦略を構築

このように、営業担当者達の得意分野が明らかであれば、彼らのサービスに満足している既存顧客は、自分と同じ悩みを抱える知り合いを紹介するだろう。実際、紹介のない新規顧客は受け入れない方針を取るベテラン営業担当者は少なくない。その結果、各営業担当者にはますます得意分野と親和性の高い顧客ばかりが集まるようになり、その分野における実績がさらに積み上がるという構造になっている。

もっとも、このように顧客を選べる立場にある営業担当者はごく一部に限られる。多くは従来通り、飛び込み外交や電話勧誘を余儀なくされているだろう。しかしそのような状況下でも営業担当者が個性を磨かなければ、顧客は惹きつけられない。そこで伝統的・独立系営業担当者の両方を抱えるレイモンド・ジェームズは営業支援策の1つとして、紹介獲得方法を指南する双方向ツールの提供を始めた。「紹介戦略」と名付けられたこのツールは図表2の5つからなる。この中でも特に、営業担当者の個性の視覚化を支援するのが1番目と3番目のツールである。

1番目は、営業担当者の性格判断を行い、有効な紹介依頼アプローチを探るツールである。社交的なタイプには既存顧客が友達を連れて来られるイベントを定期的に開催する、思慮深いタイプには専門職種の団体に加入して人脈を作るといった手法が提示される。

また3番目の「バリュー・プロポジション・ビルダー」は、営業担当者の個性の文書化を支援するツールである。ここで言う営業担当者のバリューとは、ターゲット顧客層のどのようなニーズに対し、どのような目的でどのような解決策を示すのかを表現したものである。21種類の顧客層、12種類のニーズ、13種類の目的、8種類のサービスのリストから自分に適したものをそれぞれ選ぶと、自動的に自分のバリューを説明する文章ができあがる仕組みである。

図表2

***

翻って、わが国の投資家は大手やブランド至上主義で、米国の投資家とは様相が異なる、と言われることも少なくない。そもそも自分のニーズが分からないため、一通りのサービスが揃う大手を選ぶという考え方もあろう。

実際、組織のブランドは一定水準のサービスを約束することも多く、その安心感を求める個人投資家は米国にも存在する。しかしこれは、裏を返せばサービスが汎用性の高いものに限定されることに他ならない。

個人投資家が自分のニーズにより即した営業担当者を選ぼうとするならば、個性豊かな彼らとの親和性も吟味する必要がある。前述のチェース、ヴァン両氏の顧客層に合致する個人は極めて限られる一方で、「隣の億万長者」をターゲットとするマルーク氏に親しみを感じる者は少なくないだろう。

こうした米国の事例は極端だとしても、わが国ではこれまで、組織のブランド力がもたらす統一感が優先されてきたように見える。今後、営業担当者が個性を発揮しやすくする仕組みを整えていくことで、顧客の担当者選びに変化を与えることはできないのだろうか。

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