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IFA業界事情

米国投信ビジネス2000兆円の深層

(第8回)
独立前から始まるサポート 
チャールズ・シュワブの広範なアドバイザー支援

画像:沼田 優子 氏
明治大学 国際日本学部
特任准教授
沼田 優子 氏

東京大学経済学部卒業後、野村総合研究所入社。NRIアメリカ、野村資本市場研究所にて、日米の金融機関経営、資本市場動向等の研究業務に従事。野村證券を経て、2012年より現職。

前回は、米国で預り資産最大となったチャールズ・シュワブがフィデューシャリー型の独立系アドバイザー市場を育てたことを紹介した。そこで本稿では、同社のアドバイザー支援について紹介したい。1社のケースではあるが、業界全体を盛り立てていく上で、必要な機能が見えてくるかもしれないと感じるからである。

数千もの投信を揃える商品と取引システムからスタート

昨年、30周年を迎えたチャールズ・シュワブの独立系アドバイザー部門が、発足当時提供したのは商品と取引システムである。

商品においては、同社のプラットフォームが提供する数千本の投資信託がアドバイザーを惹きつけた。金融機関系列の投資信託が全盛であった当時、中立性をうたう独立系アドバイザーにとって、多様な運用会社の投資信託が1カ所で購入でき、取引明細書が一元化されるメリットは計り知れなかった。

取引システムは、投資一任契約を結ぶ独立系アドバイザーが顧客に代わって発注できるよう、取引ソフトウェア(インターネットがない当時は差別化できた)を配った。注文執行、資金決済、取引明細書作成・送付等の事務処理業務ももちろん一手に引き受ける。

また、独立系アドバイザーが一堂に会して見識を高めあう年次総会を開催したり、ファンドマネジャーとの対話の機会を設けたり、第三者の情報をまとめて購入して割安価格で卸す等、アドバイザーの自己研鑽も支援した。

90年代半ばからは、対面アドバイスを求める個人をアドバイザーに紹介している。預り資産50万ドル以上の顧客に限定しているため、同社の他のチャネルとは直接競合しない。

最近では、同社のアドバイザー検索ページでアドバイザーの選び方の指南も行い、経歴や資格、手数料等、個人が尋ねるべき事柄を列挙している。個性豊かなアドバイザーと多様な個人が長期的な関係を築くためには、互いに適性を見極めるべきだからである。

立ち上げ・拡大・継承――ライフサイクルに応じた支援

営業支援は、事業そのものや情報技術の支援へと、洗練度を増しながら多様化していった。アドバイザーのアドバイスにかける時間を増やす施策は、全て支援に値するとの信念からである。

事業支援では、独立支援チームがまだ金融機関に勤務するアドバイザーに寄り添い、どのような選択肢があるのかの相談に始まり、独立までの工程管理を請け負う。何よりも重要なのはアドバイザーと証券会社を移る決心をした顧客の資産のスムーズな移管であるため、これも専任者が対応する。

独立後のアドバイザーには、事業ライフサイクルに応じて、立ち上げ、拡大、継承の支援を行う。そのベースとなるのが、シュワブが毎年行うアドバイザー調査である。参加業者は自社類似の預り資産・ビジネスモデルの業者平均データと自社を比較して、今後の事業戦略に役立てられる。

シュワブはこれを基に、事業戦略・企画、事業開発・マーケティング、人材開発、事業継承、情報技術・オペレーション、コンプライアンスの6分野のコンサルティングも行う。上述の年間調査から、上位20%のアドバイザーは、人材と情報技術の効率的活用に秀でており、これが成長の原動力であることが分かってきたからである。

事業拡大中のアドバイザーには、自力での成長を支援する求人情報サイトと、買収による成長を支援するM&Aマッチング・サイトを提供している。いずれもアドバイザー業界仕様のテンプレートがあり、20分程度の記入で情報をポスティングできる手軽さである。もちろん、事業継承を考える業者もこうしたサイトは活用できる。

もっとも最近は、アドバイザーの第1世代は金融機関からの転職組でも、次世代リーダーは業界内で育成したいという声が高まっていることから、人材育成にも力が入る。

例えばシュワブは2014年から、アドバイザー業者の経営幹部とその候補生向けにMBA型のリーダーシップ・プログラムを提供している。一方、学生インターンシップは、シュワブの各部署で経験を積んだ後、アドバイザー業者での実地訓練も行う。アドバイザーは、このインターンシップ修了生を採用することもできる。

使い勝手にも徹底的にこだわる情報技術支援サービス

情報技術支援の中核は、2010年にシュワブが有力業者と連携して構築したオープン・アーキテクチャー型プラットフォームである。アドバイザーは発注システムの他にもデータやリサーチ、顧客情報管理(CRM)、書類管理、ファイナンシャル・プラニング、ポートフォリオ・マネジメント、リバランス、報告書作成等のツールを使う(図表1)。彼らは前職で使用していたツールを望む傾向がある。そこでシュワブはアドバイザーが自社に必要なアプリケーションを十数社から選び、割引価格で利用できるようにした。データのやり取りは基本的にリアルタイムでシームレスに行われる。

なお、ポートフォリオ・マネジメント・システムは資産管理型営業の要であることから、シュワブも自社で開発しており、3000以上のユーザーがいる。このシステムは、その運営自体もシュワブに委託することができる。

もっともこうしたアプリケーションの使い勝手は、アドバイザーが不安に思うところであろう。そこでシュワブはアドバイザーによるアプリケーションのレビュー・サイトも用意した。

また上述の調査から、人と情報技術の生産性を上げるには、両者の織りなす効率的業務フローが不可欠なことが明らかになってきた。そこでシュワブは第三者のアプリケーションも含めた複数の業務フロー案を作り、ワークフロー・ライブラリーに格納した。アドバイザーは自社に適した業務フローを選び、チェックリスト等を使いながら適任者に業務を割り振れば、手順書ができるようになっている。

図表1

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30年前に後方事務業務を提供することで始まったアドバイザー事業であるが、現在の充実ぶり(図表2)には目を見張る。シュワブもいつの頃からか、自らを「カストディアン」(有価証券の保管・管理を投資家に代わって行う金融機関)と称している。本家の年金基金のカストディアン市場では信託銀行の寡占化と巨大化が著しいが、アドバイザーの営業支援事業を「カストディ」機能の小口化と捉えれば、アドバイザー業界の発展に必要な機能や新たな事業機会も見えてくるのではないだろうか。

図表2

IFA業界事情-米国投信ビジネス2000兆円の深層

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